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折り曲がりの屋根が個性的な部屋を演出する別荘
富士山中腹に建つ別荘。
南側に富士山へと続く森がある。そこで屋根を富士山方向に敬礼するような、片流れの形式にすることからこの建物の設計が始まった。その一方、冬には1~2メートルもの雪が降る立地のため、1~2週間訪れない間に北側にあるエントランスに雪が落ちて埋まってしまう。
そこで片流れの短手勾配は変えずに長手方向に屋根の形状を折り込んでいくことで、雨や雪の落とし方をデザインした。
建物は南北に貫くセンターテラスを配し、母屋と離れに割った構成。屋根をこの上部で山型に折ることによって、玄関脇に雪を落とし、入り口が雪で埋まるのを防いでいる。谷状に折れる屋根は駐車場の脇に雪をまとめて、その近くに開けられた開口部の窓から、雨の日は谷に集まって落ちる雨を眺められる。
建物内は薪ストーブを中心としたラウンジ周りのワンルーム空間が中心となっている。天井の高さの変化や、折れ曲がりの屋根が現れることによって、薪ストーブの暖気の上がる「冬の室」となるロフトスペースと、「夏の室」となる奥の小上がりとを緩やか分節している。
トレッキングや自転車が趣味という施主の好みを反映した、スロープや段差も各所に設けられ、あたかも部屋の中にもうひとつの自然を感じさせる場所となっている。南側のロフトに上がる部分は母屋と離れを細長い空間で繋ぐと共に、屋根や床の線状の変化が感じられる仕組みだ。
原始的な「片流れ屋根」に、折り込むという操作を加えることによって、ありそうで見たことのない、古くて新しい建物のあり方を実現させた住まいとなった。
外観
富士山麓に建てられた別荘の南側外観。
センターテラスを挟んで左側に母屋、右側に離れが設けられている。上部のロフトはツインカーボで覆われ、両者を繋いでいる。屋根は長手方向に折り込まれ、北側に向かって低くなる片流れとなっている。
2階ロフト
片流れ屋根の傾斜が現れるロフト室。母屋と離れを細長い空間で繋ぐ構成になっている。高断熱のツインカーボパネルで採光を取り入れて、明るい雰囲気に。更に東西両端の開口部から抜ける風で、自然換気を確保した。
1階ラウンジ
ラウンジから西側を見る。北側の開口部は富士山の勾配に沿って下る道を見渡せる。壁伝いに設けられた棚は、折れ曲がる屋根に呼応するように傾斜がとられている。
南側テラスを見る
左からキッチン、ラウンジ、夏の室。吹き抜けの2階はロフトとなっている。屋外には焚き火テラスを設け、バーベキューなどを楽しめる。
外観
北側外観。短手勾配を変えずに長手方向に折り込んだ片流れ屋根によって、雨や雪を玄関脇と駐車場の脇に落ちるよう計画させている。
外観屋根
北側から見る片流れの屋根。谷になる部分などは、屋根の勾配に対して雨が漏れやすい部分が発生しないように板金の張り方を調整した。
2階ロフト部
2階ロフトに設けられた冬の室。勾配屋根の形状と相まって隠れ家的雰囲気をかもし出しつつ、ツインカーボパネルと吹き抜けにより明るさを取り入れている。1階ラウンジと夏の室を見下ろすことが出来る。