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ふたつの屋根が個性的な部屋と空間を造る大和棟
奈良市の西方に建つ施主の家。家族は夫婦と子供、愛犬の構成だ。
機能的な諸室は勿論だが、どこか日本式なものを感じさせる住まいが望まれ、この地方独特の大和棟式の建築法を採用した。
地域特有のもののみならず、この住まいでは大屋根と下屋根を重なり合わせることで、諸々の部屋の用途を使い分けたものとなっている。ふたつの屋根がそれぞれに持つ、違った形のスケール感を生んだ住まいと言えるだろう。
棟を支える柱は敢えて設けず、外壁周りの柱と壁に載せかけるような形式を採用し、内部の大空間が生まれると同時に、屋根の存在感を際立たせた。
1階には大屋根の下の高い空間にあるリビング、ダイニング。その他の寝室などの部屋は、下屋根の空間にと異なるスケールによって、各部屋の個性的な空間が垣間見える。
また特に用途を決めていない自由な空間は、ふたつの屋根が折り重なる。両サイドの妻面からハイサイドライトで採光を確保し、屋根の反射によってやわらかな空間を生み出している。2階の両サイドのスペースは下屋根に沿って高さが揃えられた。
このふたつの屋根の折り重なりにより、日本式様式美を生み出すと共に、明るく吹き抜ける雲の上のような位置に建つかのような感覚だ。2階のこの場所からは、遠く若草山を望む事が出来る。
屋根架橋部を見上げる
急勾配の大屋根は頂部で登り同士を合掌させ、それを支える柱などを省略し、緩勾配の下屋根との接続部では束材で両者を繋ぎ自立させている。正面壁の向こうは階段室。
廊下部分天井は空調機とメインメンテナンスのために取り外し可能なスギルーパーとした。夏季は空調と共に大屋根から熱気を排気し、冬季の暖房は蓄熱式床暖房を利用する。
屋根裏越しに階下を見る
右半分にある下屋根が形作る家型の空間は、天井高さ834~2875mmの寝室となっている。
右手前のフリースペースは木面にトップライトから射し込む光を受けて柔らかく反射した空間を持つ。
2階フリースペース
大屋根と下屋根のふたつのスケールを体感出来る2階フリースペース。
リビング横
書棚は、リビング横の廊下に面する。
高さ2020mmを覆うのはスギルーパーの天井。
西側外観
西側切妻。
大屋根約12寸6分、下屋根約6寸の屋根勾配は、スケールの大きさを感じさせる。
南側外観
南側からの外観。
軒の高さは2280mm。2階フリースペースのハイライトライト越し開口部から視線が抜ける。