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環境に対応した”大屋根”と”段々畑”を持った住まい
出雲地方の象徴とも言える「北山」が背後にそびえた地域。
のどかな自然が残されたこの地域だが、一方で出雲大社に続く幹線道路もあり落ち着かない環境にある立地の住まいである。
このような環境の中で考えだされた建築回答が「大屋根」と「段々畑」だった。
道路と建物の間に背丈ほどの盛り土を設け、外部からの要因を緩やかに遮り、盛り土と続くように伸びる片流れ屋根が建物を風雨から守っている。更にこの盛り土と内部空間の間に大きな軒下空間を造り出し、段々畑はガーデニング好きの施主の奥様により様々な植栽が植えられた。
この緑豊かな空間は、1階の居間に対する大屋根とも相まって中庭的空間を造り出した。また大屋根には施主の仕事も兼ねた太陽光パネルが設置され、エネルギーのコントロールを図りつつ、深い軒によって夏冬の陽射しもコントロール出来る仕組みとなっている。
夏も暑く雨も多いこの地域で、大屋根や深い軒が日陰を落とし、雨よけになることで折角の中庭やデッキテラスが「使えない場所」にならないよう配慮がなされた。自然の地ならではの外の風や緑をより感じられるものとなっている。
従来の田舎の家作りとは異なった形であるこの住まいが、この地域性に新たな風景や周りの環境に溶け込んでいくものとなっていく期待を生み出すものとなるだろう。
外観
出雲市の幹線道路沿いに経つ住まいの東側外観。
前面道路と建物の間には、段々畑と連なるように片流れの屋根を設け、大きな軒下空間となった。
はぜ葺きの屋根には太陽光発電が設置されている。外壁は焼きスギ張りとした。
中庭
居間に面した中庭は、大屋根が約5m伸びた軒下空間に位置する。
大屋根を3300mm×3400mm切り欠いた中央にはシマトネリコが植えられた。
盛り土と部分的な外壁によって、プライバシーを保っている。
居間と中庭
居間から中庭を見る。
中庭の入り口に、セランガンバツ材のデッキが設けられている。
外部倉庫
軒下のヴォリュームは外部倉庫。
車庫、玄関と中庭は回避出来るようになっている。
キッチン・ダイニング
1階キッチンとダイニングを見る。
床はスギ無垢フローリング仕上げ。
キッチンカウンターはダイニングテーブルと一体化するように作られた。
2階
2階北側から子供室が連なり、中庭に面する位置には洗濯干場が設けられている。
洗濯干場の床はFRPグレーチング床仕上げ。
奥には畳敷きの寝室を配した。
2階フリースペース
階段を上がってすぐの場所に、畳敷きのフリースペースを設けた。
各子供室は、片流れ屋根の特性を活かした天井高を利用して、ロフトベット付きとなっている。
撮影 新建築社写真部