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南北の個性的な2棟を植樹が繋ぐ宿場町の住まい
江戸時代は山陽道の宿場町であった一角にある、4人家族の住まい。
敷地周辺にはかつての木造家屋が点在するなど、昔ながらの面影が残っており、また敷地背後には山がたち迫っている。
そのため、前面道路の南側は周辺のスケール感を持たせ、敷地の隣に空き地があることを考え、圧迫感を街並みに持たせない、建物のヴォリューム感がテーマとなった。
拡張の可能性がある前面道路には鉄骨造である2層の棟。その奥に3層と4層の鉄筋コンクリート造の棟と配すという、分棟構成とした。
2棟それぞれの外気や通風の確保のため、全ての諸室が外気に対して有効に接し、それぞれの棟が向き合う構成に。各棟には微妙な平面と断面にズレを設け、より明るさと開放感を確保している。
主たる生活空間は2階に配した。2層棟にリビング、3層棟にダイニングを配し、トンネル状の階段室で繋ぐことで動線を確保。
またそれぞれの床レベルを微妙にずらすことで、1階から3階までの大きな視覚を内包させた。
前面道路に面するリビングには、エキスパンドメタルのファザードを設けることで視線をコントロールし、やわらかな光が木漏れ日のように採り入れるように工夫がなされた。また、2棟の間には3種の植樹を設けた。
この側面ファザードによって大きな一枚板になりがちな建物を異なる素材によって解消し、より柔軟な雰囲気をかもし出すこの住まいは、宿場町の環境に新しい趣のある表情を見せて佇むものとなった。
海田の家
宿場町の低い街並に溶け込む分棟によりボリューム構成。
外観
背後に山がそびえ立つ細長い敷地に建つ建物の南側からの外観。
鉄骨造の押し出しセメント板の外壁仕上げとなっている手前の2層の棟。
鉄筋コンクリート造で外観はコンクリート打ちっぱなしの奥の棟は3層と4層が組み合わさっている。
リビングからダイニング・キッチンを見る
リビングの南棟とダイニング・キッチンのある北棟は、トンネル状の階段室で繋がっている。
2棟は床レベルが550mmずらされており、リビングの天井高は3400mm、北棟のダイニングの天井高は2445mm。
2階ダイニングからリビングを見る
リビングとダイニングの2棟の間にあるテラス。
ダイニング右手の引き戸の向こうにあるのがリビングに繋がる階段室。
リビングとダイニングそれぞれのステンレスの3枚引きの建具は、奥行き2700mmの緑が繁る外気により開放感を生み出している。
ポーチから階段室を見る
3階建ての建物の階段は、構造、勾配、仕上げが場所ごとに異なる。
2階では階段横にダイニング・キッチンへと繋がっている。
リビング
長手南北二方向を、全て開口部としたリビングは明るい雰囲気。
南側開口部はFIX窓とジャロジー窓を組み合わせている。
北側開口部は引き戸を設け、テレビボードと同じロシアンバーチ製の棚が配された。
アプローチ
1階アプローチから南側を見る。
前面道路に面した南棟にはエキスパンドメタルのファザードを設け、柔らかな光を取り入れると共に、外部の視線を適度に遮っている。
南棟と北棟の間の植樹
2棟の間には、アオダモ、ハイノキ、ヤブコウジが植樹され、緑が存分に楽しめる。
海田の家
リビングとダイニングに挟まれた中庭空間。流れる風を、揺れる枝葉で楽しむことができる。