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情報空間を思わせる”ネットワーク”のような住まい
埼玉県・大宮駅に近い住宅密集地にある住宅。
89㎡の敷地に対し、建蔽率は50㎡である。
そこでその上限50㎡の建築面積を設定し、東西と南北にそれぞれ2層に渡り、高さを半階ずつずらして4つの床を配置した。
建物の周囲を構造となっている庇が取り巻き、それぞれの床を繋げている。その庇と床が連続しながら上昇していくという"ネットワーク"のような空間を造り出した。
枝分かれした部分には*ヴォイドが生み出され、空間と視線の抜けが生じる。だが動線としては*ヴォイドの反対側の空間には、各室とそれぞれを繋ぐ階段によって大回りして辿りつく構造となっている。動線と視線の関係は、長い距離と短い距離の関係を同時に埋め込まれたものとなり、インターネットの情報空間のような複雑で、多様な関係性を居住空間に落とし込んでいる。
住み手は決して広くはない床面積の中で多様な距離感と共に奥行き感の知覚や、互いの気配を感じ取る距離感を得ることが出来る。
このような錯綜した多様性のある距離感が埋め込まれた空間は「複雑な階層上のネットワーク」となり、現代社会の情報化とネットワーク化に建築が呼応した建築のあり方として誕生した住まいとなった。
*ヴォイド:建築などにおいて吹き抜けなど何もない空間のこと。
北側を見る
東西、南北でそれぞれ2層に分かれ、床の高さを半階ずつずらし各室を配した。
床は周囲の庇によって繋がれている。
構造も兼ねた庇は中に設備配管が巡っている。
南東部を見る
敷地の南東角には1階にダイニング、2階に書斎が位置する。
各室で床仕上げが変えられている。
ダイニングはビニール床シート、書斎はサイザル麻が貼られている。
2階書斎から
1.5階のキッチンから書斎、屋上へと斜めの壁と庇が繋がる。
対角線上の位置にある部屋へは階段を昇降して遠回りしアクセスする。
外観
北西側外観。
住宅密集地にある公道から入った幅4メートルの私道に面している。
4周を巡る庇が、ガラス張りのワンルーム空間に対して外部との緩衝の役割を担っている。
屋上
屋上テラスは周囲の屋根より低い位置に。
南北に渡るこのテラスには、書斎とゲストルームから別々にアクセス出来る。
テラスに溜まった雨水は、FRP防水が施された磁器質タイルの床下を流れて、壁に埋め込まれた桶を通して地下へ排出される仕組み。
外観夕景
北側からの外観夕景。
1階ダイニングの床下に空調設備、収納が配されている。
キッチン
1.5階のキッチン。
南西角に位置し、庇の下に収納が納まる。
洗面室・浴室
0.5階の浴室、洗面室。
タオルホルダー、ペーパーホルダーと一体化した洗面台はSUS仕上げで特注で制作したもの。
寝室
-0.5階に位置する寝室。
ぐるりと囲える遮光カーテンが設置出来るよう工夫されている。
またポリエステル製のミラーカーテンにより、外部と内部の視界をコントロール出来る。