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伝統的な長屋改修が生んだ街区への自然空間
京都市旧市街の永倉町の住宅。
まさに崩落寸前だった3軒長屋のうちの2軒と、別棟1軒の計3軒を改修、1軒の住宅としたものである。
周辺は同じように老朽化した長屋のテラスや、中高層マンションのバルコニー、開発道路とそれに面した商品住宅街といった現代の京都独特の中に敷地がある。
この改修では、伝統的軸組立法で建てられた既存不適格建築物の再生、旧市街特有の地割りの保全、空き家の活用、街中に安く土地と建物を購入し快適に住まうといった計画が意図された。
母屋(旧長屋)はスケルトンにした上で、新たに壁と床を配し、5つの間を配した。既存の開口を残しつつ、南の開口から北の開口へ繋がる従来の長屋の軸性の名残を残した。
西面は全面開口とし、玄関から空き地へ抜ける新しい空間の流れを創りあげた。母屋東の壁は隣家と連棟で壁を共有しているため、既存の柱の内側に新しい柱を添わせ補強した。
ワンルーム空間となっている母屋と別の離れ(別棟)は、土間、板間、畳間の3室から構成されている。離れの2階の板間と畳間は母屋から離れて籠る際や来客が宿泊する際などに使用されている。
屋外空間は路地、庭、空き地と3つの空間がある。
特にこの住まいを含む街区の中央の空き地は、ぼほ放置された状態となっており、この街区に光や風などの自然をもたらし、街区の猫たちの散歩道となっている。
この長屋改修によって、街中でも自然を感じられ、京都特有の風情を兼ねた住まいが完成した。
北西側外観
3件長屋のうち2件と、別棟1件を改修。
旧3件長屋の母屋と旧別棟の離れに面した空き地に開放されている。
2つの棟は2階デッキで連結している。
敷地
離れの屋外階段から路地を見通す。
再洞院通りから路地裏に入った再建築不可の敷地。
左側の母屋は隣家と連棟で建っており、東側の壁を共有している。
母屋内観
庭に繋がるくつろぎスペースの間、キッチンカウンターの間、土間、2階の上の間まで連続して繋がるワンルームになっている。
柱や建具に一部既存のものを使用し、新設のものと馴染むよう設置されている。
建物周辺
敷地周辺には中高層マンション、商品住宅などが経つ。
水回りは母屋のヴォリュームに収まっている。
畳間
離れ2階にある畳間。
既存ヴォリュームから北西角を減築し、西・北・東の3面の開口部を連続させた。
離れ2階の上の間
離れ2階の上の間は寝室として利用。
既存の北向き開口を出窓とし、東からの採光を確保。
壁は漆喰塗りとしている。
改修前の様子
改修前はいたるところで雨漏りがし、建物が傾き、柱は足元で腐朽してしまっていた。
既存の土壁を解体し、出た土を現場で腐食。新たに塗り直し土壁を新設した。
浴室
北側に位置する浴室。
屋根には半透明のポリカーボネート。
壁面にはコンクリートブロックを積み、棚や鏡、換気扇、照明などを壁面に埋め込んでいる。
離れ2階から望む
離れ2階の板の間から、新旧が入り混じった京都街区中央の風景を望む。