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家族の将来を見据て架けた、ねじれ屋根の家
80年代に整備された千葉県柏市のニュータウン。
その一画に、子世代が家を離れた夫婦のために建替えられた住宅がある。
夫婦が老後を楽しむための住まいと考えると、平屋の住宅が望ましい。
しかし、来客用の部屋や、将来的に子供たちが住み継ぐことなども考慮すると、家族構成の変化に対応できる住まいづくりが必要になる。
そのため、平屋建てながらたっぷりと気積をもった高い屋根を架け、予備室として使用できるスペースを小屋裏に設けることで、室内に開放的で個性的な空間を生み出すことができた。
この住宅の最大の特徴は、連続的に形状が変化する、棟木をもつねじれた切妻屋根。
遊歩道に面した東側は低く、道路に面した西側に向って徐々に高くなっており、その存在感は住宅地の中でも堂々たる構え。
北側の屋根面全体がねじれているため、湾曲した天井によって小屋裏は有効に使えるようになっており、ガラス屋根やドーマー窓、換気のためのハト小屋を設けるなど、室内に多く光を取入れたり、風が抜けていく工夫もされている。
サンルーム玄関のある南側には大きな窓と縁側を設け、屋内と庭がつながっているような一体感のある広がりを感じられる。
また、菜園やぶどう棚がある庭は、遊歩道と道路の間をつなぐ、小さな公園のような佇まいを醸し出し、どこか素朴な時をうかがえる。
過不足なくコンパクトにつくられた地上階と、その上に広がるまがり屋根によって生まれた空間が、家と、そこに暮らす家族の将来に、同じ場所に長く住み続ける楽しみをつくりだしてくれる。
道路に面した西側の外観
西側の道路沿いは、登り棟が一番高い位置になり、ねじれた形状の北側屋根面が望める。
建物と庭が同じ幅で並ぶ隣家の立ち方に倣った配置だが、その個性的な外観は、目を引く存在。
遊歩道に面した東側の外観
遊歩道沿いの東側は屋根の高さを抑えている。
三角の大きなドーマー窓からは、柏市の街の様子を楽しめる。
駐車スペースと庭
道路に面した塀をなくして、2台分の駐車スペースを設けた。
ぶどう棚や菜園がある庭は、遊歩道側と道路側を行き来できるような、開けた空間に感じられる。
南側のサンルーム玄関と太陽光パネル
玄関も兼ねたサンルームの屋根ガラスからは、やわらかな自然光を多く取入れることができ、生活の中心に位置して、明るい室内を演出してくれる。
大きな屋根面を活用して設置された太陽光パネルの容量は、戸建としては多い8.78KW。
一般的な家庭の年間消費電力の2倍の発電が可能。
室内と庭をつなげる縁側
サンルーム玄関に沿って設けられた縁側は、水平に広がりを感じさせ、室内と庭をひとつながりにみせる。
庭の東側には、建主の趣味が堪能できる菜園があり、日々の生活に楽しさをプラスしている。
サンルーム玄関の上部
波板ガラス屋根のサンルームは、上部の壁面にパッシブスミターマル蓄熱材を使用し、日射熱を利用した冬場の暖房に役立てるようにした。
また、夏場はガラス屋根からの直射光を遮るため、簾を設置することができる。
広い空間となる室内
1階は3,620×2,730mmの部屋を、2×4マスで構成し、サンルーム玄関を、ダイニング、リビング、キッチン、バスルームが囲む、シンプルな空間。
大きな屋根を架けているので、室内は開放感にあふれ、サンルームからこぼれてくる光が、温かみのある暮らしを与えてくれる。
バスルームとパウダールーム
南に面するバスルームは、北側の東側の壁面をガラスにし、南側の大きな窓からは庭を望めるオープンなつくりになっている。
ねじれ屋根の空間(2階西側からの眺め)
南側の登り梁を途中で継ぐことで、長い梁間(はりま)でも安全な空間をつくり、北側の梁と三角形の架構を構成している。
南側のサンルームの屋根頂部には、換気窓となるハト小屋を設置し、室内気候を調整する工夫がされている。
ねじれ屋根の空間(2階東側からの眺め)
将来的に子世代が移り住むことも考え、大きな屋根を架けてることで、増築やリフォームがしやすい構成にした。
登り梁は606mmピッチで並び、中央に耐震壁を配置することで、長く住み続けられる、強い住宅になっている。
窓から見えるねじれ屋根
北側の屋根面がねじれが生じたのは、棟を回転して東西方向に平行になるように配置し、南側の屋根を拡張しているため。