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和に合う、ミッドセンチュリー家具との住空間
宗教施設である寺院には本殿・客殿に加えて、庫裡と呼ばれねる住職とその家族が住まう住宅部分があります。北欧の家具等も似合うミッドセンチュリーで且つ日本を感じる…生活の場と寺院との距離感を持ちながら調和を計ったデザインです。
この建築はそれでいて高い省エネ性能を持ち合わせています。断熱と庇の深さによる日射コントロールで、一般住宅の三倍の広さを同額の消費電力で、ほぼ倍の発電量を最大あげています。
この庫裡には広間の茶室、水屋、待合と呼ばれる茶道の為の諸部屋も計画されています。法規的には設計そのものにも、そして建築許可を得る為にも難しい手続きが存在します。茶室の計画に於いては、設備的に法律が安全性に追いついていない現状もあります。その点で建築家の姿勢が問われる建築だと思いました。家具は勿論、仏壇を含めて宗派・住職のご意見を参考に私がデザインしています。また庭園設計でも、植栽や石の置き方まで計画させて頂きました。
ローコストばかりでなく、庭の施工にも樹木を熟知した協力者、そしてこうした和の工事についても熟練の大工との強力なチームで当たることが出来るのも、当事務所の特徴です。
軒を深く日射を調整した省エネ住宅
北東からの外観です。軒の出は最大で1.6m。設備に頼らずに温熱環境に対して出来るだけ建築形体で対抗しながら設備に負担をかけずに売電利益を生み出しています。
モノづくりの力を感じる階段室の空間
天井材は普段天井の下地材として利用される安価な“いんにっさん”と現場で呼ばれているものを片面仕上げ処理したものを並べ上げたもの。既製品を使うくらいなら、同価で現場の職人に利益が上がる方法で、しかも建て主さんと作り手の努力を通じて気持ちの交流になることを選びました。人の手によって作られていく…そんな日本の大切にしていきたい職人の働く場をカタチとして残しました。
また階段室下は大きな貯湯タンクが内臓され、冬も冷え込みを感じさせない空間になっています。
広さの中にも場所性を意識したリビング空間
庭を眺める大きな開口に面したリビング空間。シンプルなデザインの多い事務所ですが、時には落ち着きのある重厚な空間も手掛けています。
温もりを感じる家族の集まるダイニング。
職人の力を発揮したダイニング空間です。照明は既製品のペンダントライトとステンドグラスをはめ込んだ補助照明。図面をもとに建具大工に本体を制作してもらい取付は大工と相談の上実現したものです。中央やや左は、厨房を簡易的に仕切る建具がありサービスの時は開けて使用。その下はちょっとした調味料などをさっと逃がしたり、大皿のサービスをダイニングテーブルと一体で機能する開口です。
ハイスペックな換気設備を見せずに、本格的茶室。
本間割付の京畳で構成された広間式八畳茶室。表千家の松風楼写しの床の間です。畳は勿論茶室用で目の数も縁と目の位置も正確に決め込んだ本物の畳です。床框下が通気口で室内から設備的なものは一切排除。また炭を使うことから換気設備は廊下を挟んでの別室上部に熱交換を入れた大容量換気設備を用意し、充分な換気機能と静寂性を追求した茶室となっています。
茶室の控室。京畳八畳の寄付き空間。
寄付と呼ばれる茶会の控室。こちらも茶室と同様に京畳による本間割の和室です。天井中央がエアコンの吹出口となります。
感性豊かな施主の為の書斎空間
シンプルなデザインと違って、生活感がマッチしてゆく書斎づくりがテーマでした。丸まった原稿、万年筆…さまざまなモノがそのままにされても味のある空間。豊かな日常と寄り添うインテリアとの融合を図った書斎です。
寄付での茶会事例
時に寄付と呼ばれる和室でもこのようにセッティングの上での茶会が可能です。
ワンルーム空間の中に場所性を作り出す。
間接照明、ダイニング照明で一室だった空間の中に場所性を作り出したインテリア計画です。あくまでその所作に寄り添いながらという気持ちを残しながらの大きな空間を作りました。
玄関スペース
お客様を迎える玄関スペース。クローゼットは階段室下の断熱材の無い給湯タンク室と繋がりを持たせながら雨具等の乾燥機能の補助に利用、工夫をしています。
アプローチの楽しみ
玄関へのアプローチ。丸く敷き詰め玄関室を囲んだ石は職人が現場で割り、並べて景色を作ってくれました。青い石が海のように有機的な建築表現の一部となっています。また玄関室の外壁の石割りも高さ方向に二種類のものを使い、軽過ぎず重過ぎずにまとめています。
日常の機能性能を追求した茶室の工夫
茶室には、水屋から亭主の入る茶道口とやや扱いが下となる料理を給仕する給仕口がありますが、普段の出入は水屋ではない給仕口が多様されることが多くなります。しかし正式には給仕口は茶道口より背が低く日常では使い勝手の悪い高さ。そこで、建具上部から落とし壁を作り、茶会の時は下ろし、普段は上げて日常の機能性を確保しています。