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賃貸借家のシンプルでレトロなリノベーション
最近では空家問題がマスコミで大きく取り沙汰され、世の中にたくさんの住宅が余っている現状をご存知の方も増えてきました。新たな住まいを検討する上で、新築と、中古物件を安く購入してリノベーションする2つの方法を並行して検討される方も少なくありません。特に古民家のリノベーションは、新築にはないレトロな雰囲気を楽しめるということで人気です。
ただ、具体的に中古物件の検討を進めると、現代の水準と比べて貧弱な耐震性や断熱性、気密性、防音性や設備の性能が不安に感じられたり、屋根・外壁・外構を含めて計画する必要性から新築とあまり変わらない費用がかかることが判明し、最終的には断念して新築を選ぶケースが大半です。この先何十年と住み続けることを考えてしまうと、やはり中古住宅は問題だらけで気軽に手を出せる存在ではないようです。
一方で世の中の空家物件には、自己居住用でない借家物件も数多く存在します。老朽化や、周辺に建った新しい物件との競争に負けて借り手がつかなくなり、オーナーも管理会社も大きな費用をかけて建て替える以外道がないと思い込んでいるため、何の改善措置も取られないまま放置された物件が市場にどんどん増え続けています。
しかしリノベーションの視点で見れば、昭和期の借家物件はしっかりと作られた建具や家具、アイアンの格子、焼きムラのあるタイルなど、少し手を入れるだけでレトロな雰囲気のインテリアとして再び活躍できるポテンシャルを備えた大変魅力的な資源です。自己所有では気になる性能面も、借家ならある程度割り切ってデザインに注力することが出来ます。
今回はお施主様が新たに賃貸用として購入した中古物件をリノベーション。最低限の性能更新を行うとともに、古い仕上げ材から残せる部分と交換する部分を慎重に仕分けし、新旧のバランスを取りながら色柄を加えて空間を引き締めました。
借家の家
レトロモダンなLDK。
借家の家
既存のアルミサッシを撤去して杉縁甲板貼引き戸を製作。
借家の家
約40cmあった上がり框は2段に分け、靴を収納できるように変更。
借家の家
玄関のアイストップとなる柄物クロス。床は既存のタイルの上にモルタル塗り。
借家の家
普段使いにはちょうど良い10.5帖のコンパクトなLDK。既存床の上に杉足場板貼り
借家の家
既存キッチンを換装することでレトロ感を保つ。
借家の家
借家ならではのゆっくりした時間が流れる住まい。
借家の家
和室・LDKの建具は既存枠を利用しながら、障子のみガラス格子戸に変更。
借家の家
階段手摺は1x4材でシンプルに製作。
借家の家
針葉樹合板カウンターと洗面器だけのシンプルな洗面室。浴室はレトロな床タイルを流用。