- Like!
- 1
土間・縁側で包む町家リノベーション
奈良市にある大正時代に建てられた住宅のリノベーション。建物は主に借家として用いられ、何度かの増改築を経て空き家になり放置されていました。雨漏りや蟻害によって柱・梁や土壁が深刻な被害を受けており、庭に増築された水廻りと伸び放題の樹木によって鬱蒼とした状況でした。建替えも検討しましたが、3面道路後退の影響で同規模の建物が建たないことや、お施主様が町屋に住みたいという強いご希望をお持ちだったことからリノベーションを選択しました。しかし土壁を耐震補強し伝統構法で修復するためには新築を超える時間や費用が必要です。また家全体を断熱補強・高気密化すると屋内と屋外が緩やかに繋がった町屋らしい雰囲気も壊れてしまいます。そのためコンパクトな居間を家の中心に据えて現代的な工法で耐震補強・断熱補強を行ない、その周りを玄関・収納・ガレージ・縁側・トイレ・書庫・階段から成る半屋外の「透き間」で囲んだ入れ子状の間取りとすることで、コストを押さえつつ、屋内・半屋内・屋外の3つの領域が重なり響きあうような、町家の雰囲気を引き継いだ住まいを設計しました。
透き間の家
外観夕景。アルミのフェンスやカーポートは撤去し、オープンな外構に変更した。
透き間の家
玄関から見る透き間。耐震性、断熱性、空気調和、視界調整、収納、回遊性、と住宅の性能や空間性を支えている。内郭部分は新たにコンクリート基礎を立上げて土台と緊結し、耐震性を確保。
透き間の家
階段から玄関見返し。床はナラフローリング無塗装。
透き間の家
居間。建具全開時は屋内と屋外が一体化する。
透き間の家
キッチン正面。バックセットのタイルはお施主様お好みのブルー。
透き間の家
東側の透き間は階段と書庫。ドアは元の応接間に付いていたもの。真鍮のドアノブを入れて再生。
透き間の家
ダイニングから庭を見る。
透き間の家
古い風呂・トイレを減築したことで明るい庭が復活した。東面はブロック塀を撤去して生垣に変更。撤去した瓦を一部再利用。曲がりくねった柿の木がかつての鬱蒼とした様子を伝えている。
透き間の家
玄関から土足で通じる土間ガレージは旦那さまの自転車など多目的に利用する趣味室。そのまま庭に出ることもできる。
透き間の家
ライブラリから南を見る。中央はロフトへ続くはしご。
透き間の家
ウォークイン・クローゼット上を活用したロフト。寝室・子ども部屋と一続きの空間。
透き間の家
庭からの夕景。古いものと新しいものが共鳴している。