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9.8坪の小さな家の中に広がる豊かな空間
敷地面積16.7坪、建築面積9.8坪の、いわゆる‟狭小住宅”。
小さな家の中には、狭さを感じさせない豊かで多様な空間が広がっている。
狭い敷地に家を建てるとき、床面積をぎりぎりまで確保して生活スペースをできるだけ広くとろうと考えがち。
しかし外部をうまく生かし外との繋がりをもたせることで、内部も伸びやかで快適な空間になると考えた。
そこで、3階建ての建物を縦に3分割。
南側道路に面した外側を、内と外の中間地点となる緩衝エリアに、中央を生活スペースに、一番奥の北側を階段室として振り分けた。
緩衝エリアには各階趣向の違ったテラスを設け、階段室は上部全面をトップライトに。
そのふたつのスペースに挟まれた生活スペースは、南北両方から届く光で満たされている。
1階の玄関を入ると現れるのは、天井高を抑えた落ち着いた玄関ホール。
階段のはるか上にあるトップライトから、3層を貫いて光が差し込む。
主空間であるLDKは2階に配置。
最も天井を高くとった開放的な空間で、リビングとテラスは窓をフルオープンすればひと続きに。
テラスもリビングの一部のようになる。
3階は寝室とワークスペース。
南側はテラスから、北側は階段室のトップライトから光がたっぷりと入る。
さらに上部にロフトをつくったことで、3階の床レベルに差が生じ、空間におもしろい変化が生まれた。
外部との接点を多く持たせることで、面積以上の広がりがある開放的な空間が実現。
街中に建つ小さな家ながら、外部の自然を感じる豊かな住まいが完成した。
南側外観
住宅密集地ではあるが、南側は向いのアパートの駐輪場になっており開けているため、光を遮るものがない。
南側にはルーバーを巡らせ、プライバシーを守りつつもほどよく光と風を室内に通す。
ルーバーの隙間は、下に行くほど幅を狭く、上に行くほど広くしている。
住宅ポーチ
駐車場の奥に玄関がある。
駐車場の右手のルーバーの向こうには、バスルームに面した坪庭がある。
バスルーム
バスルームは1階の南側に配置。
ルーバーに守られた坪庭を望みながら、外の気配を感じることができる開放的な浴室。
玄関ホール
天井高を2mに抑えた、静謐な印象のホール。
階段下は収納スペースになっている。
玄関ホールから2階への階段
2階から3階、3階からロフトに続く階段はパンチングメタルでつくられており、階段室上部のトップライトからの光は3層を貫いて1階まで届く。
2階テラスからリビングダイニングを見る
リビングダイニングから、広々としたテラスが続く。
南側のルーバー越しにも、1階の坪庭からも光と風が入り、外を感じることができる。
リビングダイニングからテラスを見る
折り戸を全開すれば内と外とが一体化し、テラスもリビングの一部のように。
テラスは「室外」ではあるものの、壁と屋根、ルーバーに守られているので「外の部屋」と呼んでいる。
キッチン
対面式のⅡ型キッチン。
ロフトをつくったことで、キッチンの天井が低くなっている。
小窓からは、3階へ向かう階段が見える。
ワークスペースからベッドルームを見る
3階はベットルームとワークスペース。
ここではルーバーの目は粗くなっており、角度も浅いためたっぷりと光が入る。
上部にロフトを設けた分、床が低くなったところがワークスペース。
床が高い部分を寝室とし、寝室側に天板を載せてデスクにした。
ベッドルームからワークスペースを見る
ワークスペースの天井にぶら下がっているような木の箱は、ロフト。
背後にある階段室との間は収納で緩やかに仕切り、空間に広がりをもたせた。
階段
トップライトからの光を通す、パンチングメタルの階段。
ロフトへの階段
階段室の最上部。
トップライトの向こうには青空が広がる。
ここからの光が、パンチングメタルの階段を通って1階まで届く。