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築130年の茶撚所を端正な和モダン住宅に
寺の緑に包まれた住宅街の一角に、宇治茶の歴史を築いた三名家のうちのひとつがある。
母屋は築600年を超え、敷地内にあるかつて茶撚所だった数寄屋造りの建物は、築130年。
この旧茶撚所は数十年前から住居として改装され続けてきており、一度建て替えを検討したものの、歴史ある建築を住み継ぎたいという思いからリノベーションすることとなった。
建物は天井高約2.1mと低く、室内は暗く風通しも良いと言えない。
数寄屋造りならではの良さを活かしつつも、快適に過ごせる住まいを目指した。
まず床下の断熱性を高めるために建物をジャッキアップしてベタ基礎を敷設。
不要な構造材は撤去し、差し替えなどを行い強化して、今後も安心して快適に過ごせる建物をつくった。
細切れな間取りだった約62㎡の1階部分は、間仕切りを取り払って明るく開放的な空間に一新。
リビングは大きな開口で庭に面し、光に満ちた空間へと生まれ変わった。
2階の床を一部取り払って吹き抜けにし、南向きのハイサイドライトからも光を取り込む。
ダイニングは客間の役割も兼ねるため、キッチンからは離して落ち着いた場所に。
床レベルや素材も変え、プライベートな空間とは一線を画した、もてなしの場をつくった。
モダンに生まれ変わった空間の中で歴史を感じさせるものが、既存の構造材を唯一現したリビングの柱と梁。
ずっしりとした黒い柱と梁が、100年超の歴史を感じさせる。
代々の歴史を引き継ぎつつも、現代のライフスタイルに合わせた和モダンな家が完成した。
外観
和を感じさせ、周囲の景観に馴染む外観。
改装を繰り返すうちにスレートに葺き替えられていたが、焼き杉板と漆喰で仕上げて母屋と調和させた。
住宅アプローチ
アプローチに設けた藤棚が影をつくり、来客を涼やかに迎える。
隣家の漆喰や石垣に調和するよう、北側の外壁は漆喰塗りにした。
玄関
ベイマツ材で造作した玄関扉。
玄関扉
扉のハンドルは真鍮製の特注品。
玄関
玄関土間はジェットバーナー仕上げの御影石、板の間はなぐり加工のパイン材フローリング。
桐材の格子扉の中はシュークローゼットで、一部はキッチンの収納になっている。
格子のところどころは空いていて、通気や覗き窓の役割を担う。
キッチンからリビングを見る
天井高約4.4mの吹き抜けの、開放的なリビング。
南にハイサイドライトを設けて、光を取り入れる。
白い壁で古い構造材を覆ったが、唯一リビングの柱と梁だけは既存のものを現した。
モダンな空間の中、重厚感ある柱と梁が歴史を感じさせる。
リビング
リビングは以前暗い西側にあったが、東側に移動させて中庭と繋げた。
床はオーク無垢材のフローリング。
モダンでありつつも和を感じられる素材を選んだ。
ダイニングから中庭を見る
ダイニングからリビング、中庭へと視線が抜ける。
間仕切りを取り払ったので庭から入る光を遮るものがなく、空間は光で満たされる。
中庭
既存のモミジを主役にし、苔や砂利をあしらって和を感じさせる庭に。
コンクリートがモダンな印象を加えている。
リビングからダイニングを見る
ダイニングは来客をもてなす場としても使うため、キッチンからはあえて離した。
ダイニング
ダイニングの床レベルはリビングより100mm下げ、床材も麻のカーペットに変えて独立した空間とした。
壁には江戸時代から受け継がれてきた歴史ある掛け時計が。
カウンター
階段の踊り場からダイニングの南側まで連続するカウンターは、ディスプレイスペースになる。
スリットが空間に抜けをつくる。
階段
階段の踊り場に飾った絵は、画家でもあったイノダコーヒーの創業者がバリのカフェで描いた絵画。
2階からリビングを見下ろす
吹き抜けで繋がる1階と2階。
2階ベッドルーム
以前は3部屋あった2階部分は床面積を減らし、寝室とウォークインクローゼットのみに。
照明は間接照明のみ。
障子から柔らかな光が入る。