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投稿記事
奈良市にある大正時代に建てられた住宅のリノベーション。建物は主に借家として用いられ、何度かの増改築を経て空き家になり放置されていました。雨漏りや蟻害によって柱・梁や土壁が深刻な被害を受けており、庭に増築された水廻りと伸び放題の樹木によって鬱蒼とした状況でした。建替えも検討しましたが、3面道路後退の影響で同規模の建物が建たないことや、お施主様が町屋に住みたいという強いご希望をお持ちだったことからリノベーションを選択しました。しかし土壁を耐震補強し伝統構法で修復するためには新築を超える時間や費用が必要です。また家全体を断熱補強・高気密化すると屋内と屋外が緩やかに繋がった町屋らしい雰囲気も壊れてしまいます。そのためコンパクトな居間を家の中心に据えて現代的な工法で耐震補強・断熱補強を行ない、その周りを玄関・収納・ガレージ・縁側・トイレ・書庫・階段から成る半屋外の「透き間」で囲んだ入れ子状の間取りとすることで、コストを押さえつつ、屋内・半屋内・屋外の3つの領域が重なり響きあうような、町家の雰囲気を引き継いだ住まいを設計しました。
YYAA 山本嘉寛建築設計事務所 大阪府 建築家
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環境に対応した”大屋根”と”段々畑”を持った住まい
出雲地方の象徴とも言える「北山」が背後にそびえた地域。 のどかな自然が残されたこの地域だが、一方で出雲大社に続く幹線道路もあり落ち着かない環境にある立地の住まいである。 このような環境の中で考えだされた建築回答が「大屋根」と「段々畑」だった。 道路と建物の間に背丈ほどの盛り土を設け、外部からの要因を緩やかに遮り、盛り土と続くように伸びる片流れ屋根が建物を風雨から守っている。更にこの盛り土と内部空間の間に大きな軒下空間を造り出し、段々畑はガーデニング好きの施主の奥様により様々な植栽が植えられた。 この緑豊かな空間は、1階の居間に対する大屋根とも相まって中庭的空間を造り出した。また大屋根には施主の仕事も兼ねた太陽光パネルが設置され、エネルギーのコントロールを図りつつ、深い軒によって夏冬の陽射しもコントロール出来る仕組みとなっている。 夏も暑く雨も多いこの地域で、大屋根や深い軒が日陰を落とし、雨よけになることで折角の中庭やデッキテラスが「使えない場所」にならないよう配慮がなされた。自然の地ならではの外の風や緑をより感じられるものとなっている。 従来の田舎の家作りとは異なった形であるこの住まいが、この地域性に新たな風景や周りの環境に溶け込んでいくものとなっていく期待を生み出すものとなるだろう。
原浩二建築設計事務所 島根県 建築家
ふたつの屋根が個性的な部屋と空間を造る大和棟
奈良市の西方に建つ施主の家。家族は夫婦と子供、愛犬の構成だ。 機能的な諸室は勿論だが、どこか日本式なものを感じさせる住まいが望まれ、この地方独特の大和棟式の建築法を採用した。 地域特有のもののみならず、この住まいでは大屋根と下屋根を重なり合わせることで、諸々の部屋の用途を使い分けたものとなっている。ふたつの屋根がそれぞれに持つ、違った形のスケール感を生んだ住まいと言えるだろう。 棟を支える柱は敢えて設けず、外壁周りの柱と壁に載せかけるような形式を採用し、内部の大空間が生まれると同時に、屋根の存在感を際立たせた。 1階には大屋根の下の高い空間にあるリビング、ダイニング。その他の寝室などの部屋は、下屋根の空間にと異なるスケールによって、各部屋の個性的な空間が垣間見える。 また特に用途を決めていない自由な空間は、ふたつの屋根が折り重なる。両サイドの妻面からハイサイドライトで採光を確保し、屋根の反射によってやわらかな空間を生み出している。2階の両サイドのスペースは下屋根に沿って高さが揃えられた。 このふたつの屋根の折り重なりにより、日本式様式美を生み出すと共に、明るく吹き抜ける雲の上のような位置に建つかのような感覚だ。2階のこの場所からは、遠く若草山を望む事が出来る。
岩田章吾建築設計事務所 大阪府 建築家